【豊洲新市場予定地問題】ベンゼンが人間に及ぼす影響と国の基準値とは?

小池都知事による豊洲新市場の移転延期により見出された土壌汚染物質の問題。莫大な税金を投資しておきながら、次々に明らかとなる盛土問題、土壌汚染問題、建築物耐震性、使い勝手の悪い建物構造、使用された税金の内訳…

東京都民としては、毎月負担にも感じられるほど税金を納めているわけですが、なぜこのようなずさんな状況になってしまったのでしょうか。民間企業だと考えられません。もはや呆れてしまいます。

次々に明からとなる豊洲新市場問題

最近はヒ素が検出など、和歌山の毒カレー事件で有名になった毒性物質が報道されていますが、今回の土壌問題で一番ピックアップされた毒性物質は「ベンゼン」ではないでしょうか。

皆さんも中学校もしくは高校のころに「ベンゼン」という化学物質を勉強されたのではないかと思います。理系、しかも化学とは異なる分野を専攻された方、文系の方は名前だけ覚えていても「ベンゼン」の正体は忘れてしまっているかと思います。私生活にベンゼンなんて出てきませんからね。

ここで問題なるのが、メディアで連日報道される「ベンゼン」=毒という単純な理解ではなく、そもそもベンゼンとはいったい何なのか、ということ。その認識が甘い場合、ごく微量のベンゼンが土壌に含まれている場合、風評被害になりえる可能性がでてきます。本記事ではなぜ「ベンゼン」が有毒なのか。そして人体にどのような影響を及ぼす可能性があるのか。について記述していきます。過熱される報道の中、「ベンゼン」という物質について少し理解を深めていきましょう。

ベンゼンは我々の生活に欠かすことの出来ない化学物質?

まず始めに、ベンゼンの基礎知識からおさらいしましょう。ここでは、ベンゼンが分子量78.11の最も単純な芳香族化合物であるなど、学術分野で用いるような詳細まで記載しませんのでご安心下さい。ベンゼンはこのような形をしています。

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あっ!これ見たことある!という方、多いのではないでしょうか。何せ、高校化学のときベンゼンの登場をきっかけに難易度が上がるので(それだけベンゼンは工業的に応用されているということ)、覚えている方は多いと思います。

余談ですが、高校化学ではまず見ることのない、製品安全データシート=MSDSというものがあります。ここには薬品の安全性や取扱に対する注意が詳細に記述されています。気になる方のために、ベンゼンを販売している米山薬品工業株式会社さんのMSDSを下記URLから見ることが出来ます。ご興味があれば、ぜひご覧下さい。

※米山薬品工業株式会社 ベンゼンのMSDS(製品安全データシート)

それではさっそくまとめていきます。

ベンゼンは、石油化学分野において非常に重要な物質です。我々の生活もベンゼンが応用されていなければ、ここまで便利になることはありませんでした。

ベンゼンは原油に含まれ、様々な化学合成の基礎原料や有機溶媒、溶剤として広く化学・石炭・石油分野で用いられていますが、毒性に関してはあまり知られていません。

科学的には遺伝子障害性、発がん性、生体毒性が示されているため、国内外で環境基準値を設けられています。今まで大きな問題が起こらなかったので、ニュースなどに取り上げられることが少ない物質でしたが、さまざまな生活面(火力発電も含む)で排出される物質であり、2005年には経済産業省よりリスク管理上、優先度が最も高い有害化学物質として自主的な排出削減対策が推進されています。

どういったところで発生する物質なのでしょうか?

  火山の噴火、森林火災などで自然に発生する場合
  タバコの主流煙・副流煙に含まれる場合(タバコ吸ったらベンゼン発生します。路上喫煙者は歩きながらベンゼン出しています)
  石油化学工業で作られる場合(昔は製鉄産業で石炭から副産物として生産されることが多かった)
  ガソリンスタンドで給油中に放出される場合
  石油ストーブで発生する場合
  自動車や鉄道、飛行機、船舶など移動中に排気ガスとして発生する場合

などがあります。

ベンゼンにより、どのような健康被害が考えられるのか

ベンゼンに関しては世界中で人体影響に対する様々な調査が行われています。ここから人体に対する影響へと徐々にフォーカスを当てていきましょう。

まずは人体に入る流れからです。結論から申しますと、ベンゼンは「吸入」が主になります。具体的な流れとしては、先ほどベンゼンの発生源を①~⑦ほどピックアップしましたが、それらは揮発し大気へと放出されます。その後、大気中にて化学的に分解される(半減期は1~2週間程度)ほか、土壌に入り生物学的に分解される(良分解性)、地下水や地表水に入りこみます。豊洲新市場のように、土壌に入った場合、その半減期に達しない状況であれば、人がベンゼンを吸入し曝露(薬品やウイルスにさらされること)の状態になります。このときの曝露は吸入が主です。

(もちろん、曝露量や曝露時間は環境条件に寄って左右されますので一概に危険と判断することは出来ません。)

人が吸入した後、肺を通り中枢神経、肝臓を通過し、骨髄や脂肪組織、胎盤(女性の方が感受性高い)へと経過していきます。それにより影響するリスクとは、

急性影響・・・中枢神経系麻酔作用、中毒症状など
慢性影響・・・骨髄造血機能低下、遺伝子障害性、発がん性、骨髄性白血病など

の大きく二つが考えられます。
これが人体に悪影響を及ぼすと考えられています。

人体に悪影響を及ぼす可能性が高いため、企業や公的施設によるベンゼンのリスク管理が徹底されています。WTOの下部機関IARCによると、発がん性があると勧告されており、日本でも大気汚染に関わる環境基準が定められています。

(記事ない文章で断定的な表現を避けている理由は、曝露から影響リスクまでに不確実性が多いことが理由です…ご容赦下さい。)

日本のベンゼンに対する法規制はたくさんある

報道では基準値を超えた、超えていないなどの情報が発表されていますが、そもそも「基準」って何の基準なのでしょうか。“国の基準”とはいえ、その基準が例えば含有量なのか、濃度なのか、それとも曖昧な設定値を謳っている言葉なのか、はっきりとしませんよね。そこで、ここでは“国がベンゼンに対して定めている基準”をまとめました。

日本の法規制

  •      化審法:優先評価化学物質(45)
  •      化管法:特定第一種指定化学物質(1-400)
  •      消防法:危険物第四類第一石油類
  •      労働基準法:がん原性化学物質、疾病化学物質
  •      労働安全衛生法:危険物(引火性の物)、特定化学物質(特定第2類物質、第3類物質等、特別管理物質)、名称等を表示すべき有害物、名称等を通知すべき有害物、管理濃度 1 ppm(ただし、ベンゼンゴムのりについては、製造等禁止物質)
  •      環境基本法
  •       水質汚濁に係る環境基準 0.01 mg/L
  •       地下水の水質汚濁に係る環境基準 0.01 mg/L
  •       土壌汚染に係る環境基準 0.01 mg/L (溶出試験検液濃度)
  •       大気の汚染に係る環境基準 0.003 mg/m3 (年平均値)
  •      水道法:水質基準 0.01 mg/L
  •      下水道法:水質基準 0.1 mg/L
  •      水質汚濁防止法:有害物質、排水基準 0.1 mg/L
  •      大気汚染防止法:特定物質、有害大気汚染物質 (優先取り組み物質)、環境基準 0.003 mg/m3(年平均値)
  •      土壌汚染対策法:特定有害物質、土壌溶出基準 0.01 mg/L
  •      海洋汚染防止法:有害液体物質C 類
  •      船舶安全法:引火性液体類
  •      航空法:引火性液体
  •      港則法:引火性液体類
  •      廃棄物処理法:特別管理産業廃棄物、判定基準 1 mg/L (廃酸・廃塩基、含有量)、0.1 mg/L(汚泥など、溶出量)
  •      建築物衛生法:水質基準 0.01 mg/L
  •      高圧ガス保安法:毒性ガス、可燃性ガス

Wikipedia参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%B3%E3%82%BC%E3%83%B3

こんなにも沢山あるんですね!これらを一つ一つ調べ上げて「豊洲土壌問題のベンゼンは、国の基準をクリアしている」と、数値と一緒に公表されたのであれば納得ですが、まだまだモヤモヤすることの多い問題です。

利権絡みや政治絡みの問題が引っかかっているのであれば(ほとんどこれが原因だと思いますが)、それすらもベンゼン以上の詳細を明るみに出して欲しいですね。

我々国民の血税を使っている以上、最も効率の良い方法で問題を解決してくれることを切に願います。

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