世界初!-70度という高温超伝導の結晶構造が解明!室温超伝導体の開発に大きな弾み。

世界初!-70度という高温超伝導の結晶構造が解明!室温超伝導体の開発に大きな弾み。

 

2016年5月 兵庫県の大型放射光施設Spring8より、世界初の素晴らしい技術が発表されました。なんとなんと!-70度以上の高温領域で超伝導現象を起こす硫化水素の結晶構造が明らかとなりました!物質自体は以前より注目されていたのですが、構造までは明らかにされていませんでした。これ、とんでもなく凄いことなのです。金属物理学や結晶構造学を専門としている方々には衝撃的なニュースではないでしょうか。

Spring8やら、高温超伝導やらー70度以上やら、、、意味不明と感じられる方も多いでしょう。この実験事実がどれほど偉大なのかを解説していきますね。

超伝導の世界は理系でもその分野を勉強しなければピンとこないマニアックながら夢のある分野なのです。何故夢がるのか。それは電気抵抗がゼロになる→エネルギーロスが全く無い送電を行うことができるという地球上のエネルギー問題に革命を起こすことができる技術だからです。

高温と聞くと、火力発電みたいに、高い温度を想像しちゃいますが、超伝導の世界は絶対零度(この世のあらゆる物質が凍り付いてしまう低温の限界)が基準、つまり、マイナス273.15度が基準の世界なのです。具体的には、マイナス260度くらいでも十分に高温だと言えるくらいだという認識でいてください。では、マイナス70度という温度がどれほどすごいのか。まずは高温超伝導の世界史を振り返ってみましょう。

高温超伝導の歴史

1911年:水銀の電気抵抗が4.2K(-268.8℃)以下で消失することを発見。
1933年:超電導体に強い反磁性があることが明らかになった。(マイスナー効果)
1957年:超電導の仕組みが解明される。(BCS理論)
1962年:超電導の量子論を発展させ,ジョセフソン効果が発見される。
1986年:銅酸化物による高温超電導体(マイナス243度)が発見される。

ザックリ年表ですが、要点をまとめるとこのようになります。1986年の銅酸化物による高温超伝導発見より、世界中で夢の常温超伝導に向けた研究が一気に加速します。それまでマイナス240度くらいで長年苦戦していましたが、この1986年から1990年にかけて、マイナス181度あたりまで超伝導の転移温度を上げることに成功しています。人類の進歩は恐るべきスピードです。

fig1

http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2016/160510/

図(右の模型は硫化水素の構造モデル)は超伝導の歴史と今回解明されたマイナス70度の硫化水素の超伝導までを示しています。この図を見ると、地球表面の最低温度を大幅に超えている点、長い歴史の中で今回の注目物質がずば抜けている点を見ても凄さが分かると思います。

それでは、今回の研究はこの注目されている硫化水素の超伝導相の結晶構造をどのように解明したのでしょうか。その鍵を握るのがSpring8という放射光施設です。実験室というスケールでは叶えることのできない、桁違いの指向性と強度をもつ放射光エックス線が物質解明の鍵を握ります。

硫化水素は軽元素で構成されるうえ、超高圧発生のために試料サイズが直径30μm以下となり極めて小さいため、通常の実験室X線発生装置での測定ができません。そのため、高強度・高エネルギーかつ、マイクロオーダーの径の小さなX線が使用できる大型放射光施設SPring-8の高圧専用ビームラインBL10XUに着目し、低温・高圧下のX線回折実験とともに電気抵抗測定を複合して実験を行いました。その高温超伝導相の結晶構造を調べた結果、硫化水素H2S分子が高圧下でH3Sに構造変化し、このH3Sが超伝導を示していることを世界で初めて明らかにしたのです。また、同時に計測した超伝導転移温度の圧力変化から、超伝導相には2つの構造があり、その2つは理論計算で予測されていた六方晶構造のH3S立方晶構造のH3Sであることがわかったのです。

研究者:大阪大学大学院基礎工学研究科附属極限科学センターの榮永茉利特任助教、坂田雅文特任講師、石河孝洋特任助教、清水克哉教授、Max Planck化学研究所のMikhail Eremets博士、高輝度光科学研究センターの大石泰生副主席研究員の研究グループ(大阪大学HP参照:http://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2016/20160510_2)

本研究により室温高温超伝導が現実味を帯びてきました。未来の夢の物質実現に向けて、明るいニュースを期待しましょう!