[続]ハイパーループ浮上の原理、インダクトラック技術をわかりやすく説明

 

前回の記事、「ハイパーループは21世紀の物流に革命を起こす!?」(URL:http://20swomen.com/archives/124)の続きです。

さぁ、ここからマニアックのお時間がやってきました。とはいっても、物理の原理から丁寧に説明していくと、一冊の本になりそうなので、「こんな感じです」という風に、理科が嫌いな方にもわかりやすく説明することを心掛けたいと思います。説明足らずで納得がいかなかった場合はすみません。。。

ハイパーループの魅力は前回の記事で感じていただけたかと思います。では、どのような物理法則でハイパーループという重い機体を浮上させ、高速で移動させているのか。その根本となる技術は「インダクトラック」という磁気浮上式鉄道技術が鍵を握っています。

Wikipedia先生によると、「浮上の基本原理は、超電導リニアと同様、車体側の磁石が発生する磁界が車両の運動により変動すると、軌道側のコイルに誘導電流が発生して反発力が生じる作用の電磁誘導浮上支持方式(EDS)である。」(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%80%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF)

とありますが、いやはや。全く分かりませんよね?分かる方はもうこの記事を読む必要がないかと思います…

浮上の原理をわかりやすく描いたイメージはこんな感じです。

330px-halbach2-svg

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%80%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF

矢印のついたサイコロが5つくっ付いていますよね。これ、実はすごくわかりやすいシンプルな図で、磁界の向きを表します。

ここから、このインダクトラックという磁気浮上式鉄道技術を説明していきますね。

 インダクトラック技術は永久磁石とハルバッハ配列が主役!

インダクトラックは、永久磁石を応用して成り立つ技術でハルバッハ配列という磁石の配列を用います。永久磁石ハルバッハ配列?新しい単語が出てきましたね。「はい、もう無理ー!」ってなる前に順に説明していきます。

永久磁石という言葉を聞いたことはありますか?おそらく、ほとんどの方が聞いたことある言葉でしょう。それでは、簡単に永久磁石の説明を行います。

皆さんのお家の冷蔵庫に磁石って貼っていませんか? メモを残すときに大活躍していますよね。実際、作りたての磁石材料は磁区を作って磁力を打ち消し合っています。この磁石材料を形成している鉄などの強磁性体の原子磁石は外部の磁界に敏感に反応して磁極の向きを変えます。

強磁性体というのは、鉄、コバルト、ニッケルまたそれらの合金、そしてフェライトなどが代表的で、日常生活で役に立っている磁石を想像してもらえればOKです。磁性体には種類があり、強磁性体及び軟磁性体・反磁性体・常磁性体という磁性体があります。これら磁性体については説明を割愛します。

永久磁石では鉄原子が簡単に磁極の向きを変えないような工夫がなされており、外部から磁界をかける作業(着磁)により磁区をなくしてしまったあとは、外部磁界を取り除いても元の磁区構造に戻らずに”永久”に磁石になります。

例えば、永久磁石の1つであるNd-Fe-B (ネオジム-鉄-ホウ素)磁石では、ネオジム原子が鉄原子の磁極の向きを特定の方向に固定するのです。

%e7%a3%81%e7%9f%b3%ef%bc%91

永久磁石は磁界により磁区をなくしたあと、磁界を取り去っても磁区ができず、自ら磁力を発生し続けます。

%e7%a3%81%e7%9f%b3%ef%bc%92

鉄原子だけだと磁極の向きはふらふらしていますが、ネオジム原子にはそれを抑える働きがあります。(日本磁気学会さん参照http://www.magnetics.jp/)

少しマニアックな説明になりましたが、これでも分かりやすく説明したつもりです。ご勘弁下さい。ここで一つポイントを抑えましょう。

永久磁石はずーっと特定の方向に磁極の向きを固定し、磁力が発生し続ける。

まずこれを覚えてください。というより、そこまで原理を必要とされない方は、これだけ覚えてもらえれば結構です。

 ハルバッハ配列とは何か

それでは、強引ですが永久磁石のポイントを抑えてもらえたということで、次に進みます。次はハルバッハ配列という技術です。

ハルバッハとは、名称から音楽家のバッハさんを思いつきますが全く無関係です。ハルバッハ配列は1980年、いまから30年ほど前にKlaus Halbach氏が発明した技術です。このハルバッハ配列、当初は鉄道ではなく電子加速器に応用されていました。鉄道業界に応用し始めたのは、材料調達や技術の進歩に伴い生産コストが事業化できるラインに乗ったこと、ハルバッハ理論の米国特許が切れた?(噂なので不確実)ことが理由だと考えれています。

まずはこちらの図をご覧下さい。永久磁石を適当に並べるのではなく、ハルバッハ配列という決まった方向に並び替えます。業界では黄金比とも呼ばれるこの並び替えの向き(ハルバッハ配列)がポイントです。

%e3%83%8f%e3%83%ab%e3%83%90%e3%83%83%e3%83%8f%e9%85%8d%e5%88%97

図:工学院大学 工学部 森下明平教授より参照(https://shingi.jst.go.jp/past_abst/abst/p/13/1312/tama05.pdf)

通常のN-S配置と比べ、磁石片側に磁界が集中していることが図からわかると思います。永久磁石をN-S配列ではなく、ハルバッハ配列に従って大量に並べたらどうなるでしょう。コイルから流れる電流と組み合わせることで強力な力を発揮することができます。より詳細な技術説明はここでもまた割愛させて頂きますね。(わかりやすく、が趣旨なので。)

リニアモーターカーには、下記図のような配置でハルバッハ配列が応用され、実際に各企業の各分野で実用化および試作が進んでいます。

rinia

図:工学院大学 工学部 森下明平教授より参照(https://shingi.jst.go.jp/past_abst/abst/p/13/1312/tama05.pdf)

ざっくりまとめ

永久磁石とハルバッハ配列の両方を上手に組み合わせることで、強力なエネルギーを得られる土台が完成するというわけです。もちろん、実際の現場で用意する磁石の量やコイルのスペックによって調整されますが、ハイパーループ級の装置を持ち上げて高速で移動させることは「可能」ということになります。

ちなみに、このインダクトラック方式の技術、2016年5月9日にハイパーループがローレンス・リバモア国立研究所との間で独占使用のライセンス契約を締結しています。つまり他の企業が使いたい!と申し出ても使えないのでしょうね(残念です)。

本当は日本の企業に頑張ってもらいたいのですが、人類が一歩また良い方向に前進するという意味では応援したいと思っています。