[研究不正が起こる理由] 研究不正画像の対策ソフトが必須の時代に?

いま何かと話題の論文不正問題。なぜこのような問題が起こってしまうのでしょうか。

2016年9月20日の毎日新聞より「<東大>論文不正疑惑、本格調査 調査委員設置へ」という記事を書いています。日本屈指の名門大学 東京大学ですらこのような問題が発覚し、ニュースとして大きな話題となっています。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160920-00000098-mai-sctch

学生の数が多く、国際誌への投稿数が多い東京大学にフォーカスが当たりがちですが、こういった論文不正の報道は氷山の一角であると思っています。今回は研究不正とは何か、そして、なぜ研究不正が起こってしまうのか、対策となる製品はあるのかについて、理系大学院出身である筆者なりの視点で記述していきます。

研究不正は科学の発展と信頼を妨げる冒涜である

平成26年度に文部科学省より、研究不正に関するガイドラインが設置されました。ガイドラインの基本的考えを3つほど抜粋して紹介します。

  • 研究活動の不正行為に対する基本的考え方を明らかにした上で、研究活動における不正行為を抑止する研究者、科学コミュニティ及び研究機関の取組を促しつつ、文部科学省、配分機関及び研究機関が研究者による不正行為に適切に対応するため、それぞれの機関が整備すべき事項等について指針を示すものである。
  • 科学研究における不正行為は、真実の探求を積み重ね、新たな知を創造していく営みである科学の本質に反するものであり、人々の科学への信頼を揺るがし、科学の発展を妨げ、冒涜するものであって、許すことのできないものである。このような科学に対する背信行為は、研究者の存在意義を自ら否定することを意味し、科学コミュニティとしての信頼を失わせるものである。
  • 科学研究の実施は社会からの信頼と負託の上に成り立っており、もし、こうした信頼や負託が薄れたり失われたりすれば、科学研究そのものがよって立つ基盤が崩れることになることを研究に携わる者は皆自覚しなければならない。厳しい財政事情にもかかわらず、未来への先行投資として、国民の信頼と負託を受けて国費による研究開発を進めていることからも、研究活動の公正性の確保がより一層強く求められる。また、今日の科学研究が限りなく専門化を深め複雑かつ多様な研究方法・手段を駆使して行われる結果、科学的成果・知見が飛躍的に増大していく反面、研究者同士でさえ、互いに研究活動の実態を把握しにくい状況となっていることからも、研究者が公正に研究を進めることが従来以上に重要になってきている。 <H26文部科学省ガイドラインより:http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/08/__icsFiles/afieldfile/2014/08/26/1351568_02_1.pdf>

科学の発展は確立されたコミュニティの中で、国民の血税のもとで成り立っており、どのような研究が行われているのか、何の役に立つ研究が行われているのかなどは“信頼“を前提として進められている。つまり、論文不正などを行ってしまっては、予算削減により「2番じゃダメなんですか」と言われても仕方ないのです。

研究不正とは日本だけの問題ではありません。世界中でも問題になっています。これをご覧下さい。

研究不正は虚偽・改ざんがダントツで多い!

a

Figure 5. Percentage of papers containing inappropriate image duplications by year of publication.

b

Figure 7. Proportion of papers with image duplications by country. (Figure 5&7 URL:  http://biorxiv.org/content/biorxiv/early/2016/05/17/049452.full.pdf)

上のグラフは何を意味しているのでしょうか。実は、過去20年分の論文2000本をチェックしたところ、インパクトファクター(数値が高いほどレベルの高い論文誌)の高い雑誌でも、問題のある画像が使われている論文の割合が3.8%も含まれており、しかも日本もランクインしています。とある調査結果によると、不正のある10論文のうち2論文は日本から出ている論文との報告もあります。一方、研究不正にはどのような種類があるのでしょうか。

・実験結果と異なる結果を記している

・他の人の論文結果をコピペしている

・グラフやデータの捏造、改ざん

・画像の改ざん

など、いくつか考えられます。実際に研究不正が見つかったケースの中では、どのような不正が多いのでしょうか。

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Number of retractions since 1977 and cause of retraction

F.C. Fang, R.G. Steen, and A. Casadevall, “Misconduct accounts for the majority of retracted scientific  publications.” PNAS, October 1, 2012.

上のグラフは1977年から2011年までの撤回論文2047本を分析した結果、虚偽(捏造、改ざん等)がダントツで多かったことを意味します。さらにどのような分野で研究不正が多いのかについては、医学・生物系のライフサイエンス分野が一番多いとの報告が出ています。

悪いとわかっていても、不正って何でやってしまうのでしょうね。

出世や良い研究成果を出したいという私利私欲が働くことが原因としてあるのかもしれませんが、どんなに優秀な学者さんでも、追い込まれると判断能力が鈍ってしまうのでしょう。

研究不正はライフサイエンス分野が多い。共通しているのは画像処理

先ほど、研究不正の中ではライフサイエンス分野における研究不正が多いと記述しました。これはSTAP細胞における小保方問題に代表されるように、画像を多く取り扱う分野、言い換えれば画像処理を施さなければならない分野で不正が多いのかもしれません。

画像不正が多い現状には背景があります。

画像処理教育です。

近年、顕微鏡や電子顕微鏡といったハードウェア、特にカメラの発展が凄まじく、その発展は最先端の科学分野において非常に大きく貢献していることは言うまでもありません。しかしながら、どれだけ良い画像がとれても、どれだけ高速に画像が大量にとれても、結局その画像を処理するのは現場の人間になってしまいます。

画像を処理するとは、例えば細胞の個数を計測する、面積を計測するなどが代表的で、解析方法などはほとんどが独学なのが現状です。ちょっと研究不正と話が逸れていますが、その画像解析が問題なのです。

画像解析の何が問題なのか。例えば、冒頭で文部科学省が定めた研究不正のガイドラインを読んだことのある研究者ってどれだけいるでしょうか。また、正しい画像処理方法を知っている日本の科学者はどれだけいるでしょうか。

私が大学時代に実感したところだと、おそらく学生が100人いたら1人くらいしか読んでいないでしょう。正しい画像処理方法を知っている方はもっと少ないかもしれません。例えば、画像の一部だけを加工する、異なる画像を貼り付けるなどは小学生でもわかります。しかし、コントラスト調整において過剰にかけ過ぎない、より細かく言うと、beautificationを生じさせないなどはほとんどの研究者が知らないのではないでしょうか。

今は顕微鏡カメラやそれに付随する画像処理ソフトウェアがどんどん便利な方向へと進んでいるため、単に画像を綺麗にしただけでは内部の処理過程が分からず、”科学的でない”部分を追及された場合に原因となる要因が増えてしまい困ってしまいます。良かれと思って操作した1クリックの画像処理が、結果的に間違えた画像処理になっていることも可能性としてはゼロではありません。

日本の科学界の良くないところは、この根本となる教育が疎かになっている点です。性善説を前提とした研究を行っているので、問題が発生しても、火消しを行うだけで対策が徹底してなされていないために連鎖的に不正が横行してしまうのでしょう。

論文不正画像の加工箇所を検出するソフトウェアが存在する!

東京大学発のベンチャー企業に、「エルピクセル株式会社」というライフサイエンス分野の画像処理に強い会社があります。

そこで販売されている画像処理ソフトウェアの中に、「LP-exam」というソフトウェアがあります。

dhttps://lpixel.net/services/research/lpexampro-2/

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https://lpixel.net/services/research/lpexampro-2/

一体このソフトウェア、何が出来るのかというと、研究画像に対して、画像中のどこに怪しい箇所があるのかを自動で検出する(画像によっては拾えないものもある)機能を備えた研究画像不正対策用のソフトウェアです。インターネット上ではウイルス対策ソフトが出ていますが、研究画像の分野における一種のセキュリティソフトのようなものです。

製品としてはオフライン版、クラウド版と2種類あり、クラウド版では専門家が見て自動的にユーザーへレビュー結果を返してくれるという非常に画期的なシステムです。

オフライン版は枚数制限が無く、参照したい論文に使われている画像が正しいのかどうか、これから投稿する論文に使われる画像が正しいかどうかを判断するときに非常に役にたつ、心の安心材料にもなる素晴らしいソフトウェアではないかと思います。しかも大量画像に対しても一括処理できる機能をそなえているとのことで、これはかなり使えそうですね。

大学や研究機関、民間企業には、こういったソフトウェアを各人のパソコンで使えるように標準で搭載されていると画像に対する研究不正はかなり少なくなるのではないでしょうか。一度研究不正が起こってしまうと、信頼やブランドは一瞬で地に落ちます。セーフティネットの一環で、このような対策を練る必要があるはずです。

日本の科学界を守るためにも、研究者を守るためにもこのようなソフトウェアが国中の研究者に普及・導入されることを祈ります。